柔道整復師が施術所で整体の手技を行ったら「整体師」になるのか?
Facebookを見ていると、柔道整復師に対して「療養費の取り扱いをやめて実費施術に移行しましょう」みたいなことをのたまう自称コンサルタント氏を散見する。
まあ筆者の業務形態がまさにソレで、臨床でメインで使っている手技は頭蓋仙骨療法。
これはオステオパシー由来の手技で、そうしてどういうわけかオステオパシーは日本では全くの無資格者でも施術できることになっている。
自称コンサルタント氏の言っていることは要するにカイロプラクティックとか整体とか、それからオステオパシーとかの施術を臨床の柱として、「整骨院」から「整体院」へ転換を図れということのようである。
だから(筆者を含む)柔道整復師も整体師に肩書きを替えろ、ということにもなるのかな?
アホか。
柔道整復師が仮に健康保険を使わずにカイロプラクティックや整体の手技を行っても、それはカイロや整体ではなく柔道整復なんですよ。
おんなじことをあっちこっちで書いたり話したりしているのだけれどもう一回復習ね。
- カイロプラクティックや整体、オステオパシーなどの手技療法が、医療関係の資格を持たない人にも業として行いうるのは昭和35年の最高裁判決の拡大解釈による。
つまりこれらの手技療法は「人体に有害の虞がない」ということで誰が施術しても禁止処罰の対象とはならない。
もちろん柔道整復師がこれらの手技を行っても禁止処罰されることはない。 - カイロプラクティックや整体、オステオパシーにはこれを規制する法律はない。(偽医者みたいなことをして医師法違反で逮捕されたりするのは別の問題)
だから当然、これらの業務(名称も)を独占する資格は日本には存在しない。
柔道整復師がこれらの手技を行ったとしても他資格の業務独占にバッティングする可能性はゼロである。 - 「人体に有害の虞がない」療法は柔道整復の業務に含まれるのか?といえば当然含まれるであろうと筆者は考える。
療養費の中に「電療」ってあるでしょ?
電療料の支給基準を見てみると「柔道整復の業務の範囲内において人の健康に危害を及ぼすおそれのない電気光線器具を使用した場合」とあるのがその根拠。
おそらくこの文言にある「人の健康に危害を及ぼすおそれのない」は昭和35年の最高裁判決を踏まえていると考える。 - 業務独占している医療職であっても、業務の内容が被ることがある。
顎関節脱臼の整復を医師が行えば医業。
同じ術式を歯科医師が行えば歯科医業となる。
当然柔道整復師が顎関節脱臼を整復すればそれは柔道整復。
そうであるならばカイロプラクティックや整体、その他「人体に有害の虞のない」手技療法を柔道整復師が施術することが柔道整復の業務に含まれないと考える
ことはむしろ不自然であろう。 - 柔道整復師は外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫に対してしか施術できない、という都市伝説はまだ残っているのだろうか。
確かにいわゆる慢性疾患に柔道整復師が施術して問題になっている例はある。
でもそれは療養費、保険請求に関してのことであって慢性疾患に施術したことそのものには何の法的問題もないよ。
「療養費の支給対象外の症状に対して行った施術を支給対象になる負傷に対して行ったものとして、療養費を不正に請求していた」
近畿厚生局が施術所の開設者に対して受領委任取り消しをした理由の一つなんだけれど、これをもう一遍見直してね。
問題となっているのは外傷以外に施術したことではなく、療養費の支給対象以外の症状なのに療養費を請求していたこと。 - ついでに言っておけばたぶん柔道整復師に対して「整体院をやれ」と言ってる人(の一部)に理学療法士さんがいることが話をややこしくしている。
理学療法士がマッサージや治療体操を行うことができるのはあくまで医師の指示のもとに限られる。
医師の指示なく手技療法を行う行為は独立開業権のない現在、理学療法とは言いにくい。だから「整体院」として独立開業をするという発想が出てきたものと推測する。
独立開業できる柔道整復師が、整体院を標榜する理由は全く存在しない。
こんなふうに考えてみると健康保険の取り扱いをやめてカイロとか整体とかをメインの施術に変更したとして、わざわざ整骨院の看板を整体院に変える必要は全くないことはご理解いただけたと思う。
もちろん整体院には今のところ法的に広告の制限はないから、そちらに鞍替えして広告でやりたい放題、みたいな考え方もなくはないかも。
関係法規Masters担当 金谷康弘
柔道整復師、かなや整骨院院長
専科教員として専門学校で関係法規、柔道整復理論を担当。
柔道整復師とはどんな職業なのかをあれこれ考えていたら、業界に馴染めないまま28年経ってしまう。
医師の代替ではなく現代医療を補完する柔道整復術を目指し、「外傷を診ない」「療養費を取り扱わない」整骨院を開設。
柔道整復師が自分の職業を自分の子供に説明できるように願いつつ、柔道整復師法についてのあれこれを発信中。
クラニオセイクラルな日々-あたまをさわれば幸せになる
現在、一般社団法人日本頭蓋仙骨療法協会代表理事。
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