そもそも「部位転がし」とは何を指しているのか
前回の記事では、「部位転がし」を巡る制度設計と臨床構造のズレについて述べました。
その前に、確認しておきたいことが1点。
そもそも「部位転がし」とは何を指しているのか。理解してますか?
① 柔整審査会における捉え方
保険者審査会の柔道整復療養費審査委員会(通称:柔整審査会)では、
「同一施術所における同一患者の負傷と治癒等を繰り返す施術」
を、いわゆる「部位転がし」として取り扱う傾向がある。
ここで重要なのは、
- 「⚫︎か月ごとに」といった明確な基準は存在しないこと
- 回数・期間の客観的閾値が示されていないこと
- 審査基準11事項に基づく縦覧点検等で、審査委員の裁量に委ねられていること
つまり、一定の形式パターンが観察された場合、
「何かしらの疑義」がかけられる構造になっています。(画像参照)

一方で、完全に「審査員個人の主観で何が言いたいのか意味不明」な返戻も生じています。(画像参照)

例)1月30日に腰部に治癒転帰。
→2月28日に腰部を新負傷。何か問題があるのか?
疑義となる理由すら記載されていない「29件」の“嫌がらせ”返戻。

例)寝違いで通院中、2月5日に原状回復し、通院終了。
→その日以降2月中に新たに寝違えて負傷。日常生活上、なんら自然に発生する現象。
何を問題視しているのか?理由すら記載されていない“嫌がらせ”返戻。
このような事例を見ると、
「審査基準」というより、
審査委員の裁量(感情)が強く働いている印象を受けます。
制度運用としては、
少し首を傾げたくなる場面も少なくありません。
権限乱用の「審査ハラスメンちょ会」とでも呼んでおきましょう笑(笑👎
② 健康保険組合が考える「部位転がし」の定義
一部の健康保険組合では、より具体的な表現が用いられています。

Screenshot
例えば、
3か月程度で治癒→再負傷を繰り返し、施術部位を次々と切り替えながら、
初検料・再検料・初検時相談支援料などの上乗せ点数を繰り返し算定し、
不当に高額・長期な請求を積み上げる行為。
こうしたケースを「部位転がし」として疑義対象とする考え方を持っています。
ここでは、
一定間隔での負傷と治癒の反復が問題視されていることがわかります。
部位転がし疑義に見える二つの構造
整理すると、「部位転がし」には大きく二つの捉え方が存在しています。
- 形式的な反復パターンをもって疑義とする考え方
- 初検関連加算の繰り返し算定を問題視する考え方
いずれにも共通しているのは、
「形式的傾向」から疑義をかける構造となっていること。
つまり、
実際に新たな外力が存在したかどうかとは別に、
「治った→また新たにケガをした」という反復そのものが、
推定的に“不当・不正の疑い”として扱われる。
ここで重要なのは、
実際の不正の有無とは別に、
「形式的な傾向」から疑義が生じる構造が存在することです。
そして、この構造はもう一つの現象を生みます。
それは、
「疑義が出るかもしれない」
という情報だけが強く共有されることです。
人は、損失の可能性に強く反応します。
そのため、
・返戻された
・照会が来た
・審査が厳しい
といった話は非常に早く広がります。
その結果、
制度の基準よりも、
業界の空気の方が強くなることがあります。
「推定不当・不正」という前提
ここで生じるのは、
事実に基づく不正認定ではなく、「推定不当・不正」という疑義の構造です。
その結果、
- 返戻
- 照会
- 追加資料提出
といった手続きの中で、
「不当・不正ではないことの証明」を施術所側が求められます。
誠実に請求している柔整師にとっては、
ただただ事務的負担(コスト)が増えるだけです。
一方、仮に不実請求があれば、
部位削除再請求や、返戻・照会無視による入金停止という損失に直結することに。
さて、問題の本質は何なのでしょうか?
ここで重要なのは、
「部位転がし」という言葉そのものではありません。
問題の核心は、
臨床的な通院の変質にあります。
治療のための通院。
それは今も、維持できているでしょうか。
制度を理解して保険を取り扱うのか。
それとも、業界の空気に従うのか。
この違いが、
接骨院経営の安定を大きく分けることになります。
次回、この問題の構造をもう少し深く掘り下げてみましょうね👋
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