物価高等を口実に窓口料金を上げるのは、論理バグ。次に辿り着くのが『特別費用』系の上乗せ案。
そう考えた先生も少なくはないと思います。お待たせしました。そこには更なる深い落とし穴が待っています。
本編を読む前に!前回までのこちらの記事も必読です
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【ステップ1:値上げの基本思想】
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【ステップ2:前回の記事(落とし穴①)】
今回は業界に蔓延する、特別な「●●料金」という名の論理バグについてお話しします。
① 特別な「●●料」——その『特別』、証明できますか?
窓口料金の値上げで発案される中の一つに、「通常メニューに『特別な料金』等をプラスして徴収する値上げ」という回避策があります。
「領収証上、保険分の一部負担金は変わらないから、これなら文句ないんじゃね?!」
……本当にそうでしょうか?そこには致命的な「定義の矛盾」が潜んでいます。
特に多く見られる「時間」と「技術」を切り売りする手法
「施術(手技)延長料金」や「特別技術(手技)料金」といった名目での値上げ。これらを論理的に解剖してみましょう。
付加価値の勘違い 〜「時間」を売るか「結果」を売るか〜
1. 論理バグの正体:サービス業の呪縛
値上げの際、「あと3分長く手技を追加して、今までよりプラスで50円値上げしよう!」などと考えがちです。しかし、値上げの目的が「コスト高騰への対応」や「利益率の改善」であるはずなのに、同時に「原価(先生の労働時間)」を増やしてしまっているのは明確な矛盾です。
例)現在:10分施術で窓口600円 → 値上げ案:13分施術で650円
【計算してみましょう】
値上げ前:600円 ÷ 10分 = 分単価 60円
値上げ後:650円 ÷ 13分 = 分単価 50円
「単価を50円上げたのに、1分あたりの生産性は10円下がる」。これ、経営的には値上げではなく「値下げ」ですよね(笑)
2. 「付加価値」のすり替え
「時間を延ばす」というのは、技術がない療術者のやる安易なサービスに過ぎません。本来の付加価値とは、「今までより短い時間で治す」ことや、「今まで以上の結果を出す」ことではないでしょうか?
先生は、もみほぐし屋さん(時間売り)ですか? それとも柔道整復師(治療家)ですか?
3. 患者側の論理的矛盾
患者の真の利益は「早く治って、早く帰れる」ことです。それなのに「長くやってくれる=いい先生」という誤った価値観に先生自らが加担して、患者の大切な時間を奪っていませんか?
この時間売りモデルは、「安くて長くやってくれる」という保険施術の本質とは無関係な「無駄な通院心理」を助長するリスクすらあります。
また、領収証の内訳の保険外の項目の内訳が「延長料金」とする場合、極めて深刻な矛盾が発生します。
もし患者から「延長なし(保険内のみ)でやってよ」「延長なんて頼んでないけど」などと言われたらどうしますか? そこで「割引」や「返金」に応じないのであれば、もはや延長でも何でもありません。拒否できない有料オプションなど、言葉を選ばずに言えば「詐欺的な徴収」と見なされても文句は言えませんよ(笑)。
「技術」の切り売り 〜専門家としての自己否定〜
1. 論理バグの正体:隠れ値上げの隠れ蓑
「特別技術料」を全員から徴収するというモデル。もし患者さんからこう聞かれたら、どう答えますか?
「先生、今日は手持ちが寂しいから『通常の技術(保険内)』だけでお願いしたいんですけど……」
ここで「いや、うちは全員『特別技術』を受けてもらうことになってるから」と答えた瞬間、論理は崩壊。選択肢のない「特別」は、もはや「標準(通常)料金」。全員強制の特別料は、単なる実質的な値上げの隠れ蓑であり、公定価格を無視した不当徴収との区別がつきません。
2. 「付加価値」のすり替え
「特別技術」と言うからには、通常の保険施術の範囲では治せないものを、その「特別な技術」で治しているということになります。しかし、ここに施術行為に関わるバグが発生…
- 通常(保険内): 不十分な技術(内容?種類?時間?)≒ 治りが遅い・早く治らない
- 特別(値上げ分): 質の高い技術(内容?種類?時間?)≒ 治りが早い・早く治る
これでは「保険だけだと、わざと質を落とした施術をしている」と言っているようなもの。このような技術の切り売りの場合、同じ手指で行う施術行為で、どう「質の高さ」を証明するのでしょうか?保険内は右手だけで手技、特別は両手で手技とでもするのか…
3. 論理的矛盾
「保険施術にかかる費用と、それ以外の費用の明確な区分」は絶対条件です。全員から一律で取る「技術料」は、その区分が極めて曖昧になります。
「何がどう特別なのか」を客観的に証明できず、単に同じ施術に対して料金だけを上乗せしていると判断されれば、それは「二重取り」という致命的な指摘を受けるリスクとなります。さらに、「特別技術料金」が50円や100円、あるいは数百円などの低価格となると、それこそ安売り=生産性の低下にしか繋がらないかと…

Screenshot
保険施術に「ここから先は別料金」と切り刻むのではなく、正当なロジックで全体の価値を再定義しましょう。
次回で締めます!
じゃーどうすんのか?
値上げとは、自院の価値・強みを明確にする再定義です。その具体的な考え方をお伝えします。
価格を再定義する前に、接客やホスピタリティといった「価格転換に関係のないサービス」を除いた、院の真のセールスポイントを明確にすることから始めましょう!
ヒントとして、リラクゼーション・ストレッチ業界の大手が、どのような「TPOS(時間・場所・目的・場面)」で選ばれているか、その強みを分析しますね。お楽しみに!
