前回は、安易な「延長料金」や「特別技術料」の追加がいかに論理破綻しているかについて。
プロの技術を切り売りし、生産性を下げ、挙句の果てに「保険の施術はわざと質を落としている」と宣言するような矛盾。心当たりのある先生には、かなり耳の痛い話だったカモですね笑。
今回は完結編として、それら「小手先のテクニック」という名の逃げ道をすべて塞ぎ、値上げの原理「強みの再定義と分配」、そして経営から避けては通れない「税金」のリアルについてお話しします。
これまでの落とし穴をおさらい
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【その1:窓口料金値上げの罠】
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【その2:時間と技術の切り売り】
① 自院の「強み」を明確にする
価格を再定義する前に、接客やホスピタリティといった「価格転換に関係のないサービス」を除いた、院の真のセールスポイントを明確にすることから始めましょう。
ヒントとして、リラクゼーション・ストレッチ業界の大手が、どのような「TPOS(時間・場所・目的・場面)」で選ばれているか、その強みを分解してみます。
| 企業・ブランド名 | 真のセールスポイント(強み) | ターゲットと場面(TPOS) |
|---|---|---|
| りらくる |
低価格 × 即時利用 × 気軽さ (深夜営業・ロードサイド立地・予約不要) |
「今すぐ疲れを取りたい」 「安く長く利用したい」 コスパ重視のリラックス需要。 |
| てもみん |
都市型導線 × 短時間回復(タイパ(効率)) (駅ナカ立地・短時間施術設計) |
「仕事の合間に整えたい」 「短時間でも回復感が欲しい」 都市生活者の隙間時間需要。 |
| ラフィネ |
安心して力を抜ける空間設計 (商業施設内・女性安心導線・心理的安全性) |
「日常の緊張から解放されたい」 「安心して癒されたい」 リラックスと自己回復の時間。 |
| Dr.ストレッチ |
身体変化の即時実感 × 継続サポート (パーソナル対応・指名制・回数券モデル) |
「可動域を広げたい」 「パフォーマンスを高めたい」 身体改善・継続的コンディショニング需要。 |
これらのブランドは「接客がいいから選ばれてる」ではないですよ。「安さ」「効率」「空間」「結果」という、提供価値の核が明確だからこそ、その価格設定に論理性があります。
接骨院も同じです。付随する接客力などを除いたとき、自院の「真のセールスポイント」は何ですか?
- 保険制度の恩恵を最大限に還元する(公的サービス重視)ことか?
- 他を寄せ付けない圧倒的な「技術力(結果)」なのか?
- 最小の通院回数で卒業させる「時間効率」なのか?
- 結果にコミットした「回数券・サブスク」なのか?
ここを明確にしないまま、ただ窓口料金をいじるのは、ゴールなき放浪に出るようなものです。
② 「分配率」理解していますか?
強みを定義し、売上を上げたとしても、出口戦略がなければ経営としては失敗です。
「窓口を上げた。売上が増えた。あぁ良かった。」
……もしここで思考が止まっているなら、先生の経営はまだ落とし穴の真っ只中にあります。チェックすべきは売上の数字ではなく、「分配率」です。
「売上」ではなく「分配率」で見る
値上げをして売上が⚫︎⚫︎%上がったとしても、同時にスタッフに還元する手当や、膨らんだ光熱費、材料費などでそれ以上にコストが増えていれば、分配率は悪化したまま。それは改善ではなく、単なる「延命処置」です。
論理なき値上げは「納税額」を増やすだけ
ここ、結構盲点かなと思います。
明確な分配の計画がないまま「なんとなく」で売上を増やすと、決算でドカンと税金(所得税・法人税)を持っていかれます。
論理性のない値上げは、「患者さんから集めた大切なお金を、そのまま税務署へ運ぶボランティア」になるカモですよ。何のために、いくら分配し、いくら内部留保するか。この設計図こそが値上げの根拠になります。
結論:値上げとは「再定義」
結局、値上げとは単に窓口の金額を変える作業でも、項目をひねり出す作業でもありません。
「自院の価値を再定義し、その対価をどう分配するかを設計する行為」です。
- 自院の強みを絞り込む: 安さか、技術か、効率か。
- 10割価格を定義する: プロとしての誇りを、保険の公定価格に依存しない価格で設定する。
- 分配を計画する: 増えた利益を人・設備・未来へどう割り振るか決める。
中学生にすら説明できない論理なき値上げ案は、もう終わりにしましょうね!
今一度、電卓を置いて考えてみましょう。
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