前回の記事では、柔整師が“無意識に算定している不正請求”の一つ「再検料」について解説しました。
今回はその続編として、もう一つの典型例である「指導管理料」を取り上げます。
制度上のルール:指導管理料の算定(労災保険の算定基準より)
※自賠責保険は原則として労災保険の算定基準に準拠します。
7 指導管理料の取扱い(抜粋)
- 傷病労働者の日常生活動作訓練及び機能回復訓練(矯正訓練・筋力増強訓練等)の指導管理を行った場合に算定する。
- 後療時に算定できるが、初検時であっても後療料を算定する場合には算定可。
- 週1回程度、月5回(暦月)を限度として算定できる。
制度上は明確なルールがあるにもかかわらず、現場ではこの要件が形骸化し、「やっていないのに算定している」状態が常態化しているのが実情です。
なぜ「指導管理料」が“無意識の不正請求”になりやすいのか?
- 週1回算定しているのに、算定日が不明確(「いつ」算定したのか認識無し)
- どの訓練の何を指導管理したのか不明確(内容が曖昧・抽象的)
- 根拠となる記録が存在しない(施術録に未記載)
つまり、「制度上はルールがあるのに、証拠が残っていない」。
これが調査で不正請求(=要件未充足)として扱われる最大の原因となります。
実際に現場で起こっている“誤算定”の実態
- 「なるべく安静に」「運動は控えて」「長時間の入浴は避けて」などの一言指導で完結
- 世間話レベルの会話を「指導」として算定
- レセコンの自動印字に依存し、内容を確認せず請求することで、負傷部位・残存症状との不整合が生じる(健保請求の「長期理由」同様)
- 指導管理を行ったと主張するも、証明する記録が無い
現場ではこれが“当たり前”になってしまっています。
しかし、支払側(保険者)から見れば、「指導管理の実態がない=不正請求」です。
その結果、どんなリスクが起こるのか
- 不払い・照会対応の増加(工数増・事務負担負担増)
- 不正請求疑義調査→面談への発展(余分な時間を費やし、各コスト増)
- 任意一括払いの拒否といった経営上の打撃
- 患者の信頼喪失──「説明と違う」「高額請求」などの不信感→拡散
悪意がなくても、無知と無記録は最大のリスクです。
「知らないうちに不正」と扱われるのは、制度理解が欠けている証拠=国家資格者としての信用問題でもあります。
✅ 解決策:「明確な指導」と「記録」の実施
指導管理料を正しく算定するには、次の4点を徹底しましょう。
- 算定日を明確化──週単位・暦月単位でルールを定める
- 指導対象と内容を具体化──どの訓練を、何を指導するのか具体的に取り決め実施
- 「指導管理日」「指導管理内容」を施術録に明記
- 制度ごとの算定要件(健保・労災・自賠責)を正確に理解して運用
- いつ指導管理を行うのか「指導管理日を決める」ことが大原則
良い記載例
「10/25指導管理実施。肩関節外転運動の改善見られるため、運動内容をA→Bへ変更ー指導。2週後再評価予定。」
悪い記載例
「変化無し、様子見、引き続き通院指導」
→ 評価なし/内容なし/経過不明。算定根拠が欠如。
まとめ:制度理解が経営を守る“最大の武器”
- 指導管理料は「記録が伴わない算定」が最も多い不適切請求。
- ルールを理解し、明確な記録を残すことで疑義や照会に対応できる。
- 知識第一主義=施術ー請求の整合性のある「安定経営」の基盤。。
「制度を知らなくても現場は回る」。
だからこそ、知識と記録で武装することが経営の安定に直結すると考えます。
スタッフ教育・皆に共有!
チームで運用できるように保存📘&共有!/院内マニュアルに転記・掲示。
👉 まずは自院でも「指導管理料ルール表」を作成し、「いつ」「何を指導したか」を可視化しましょう。
次回予告|「経過記録管理」の重要性
次回は、多くの柔整師が軽視している「経過の記録管理」について解説します。
施術録の経過記載内容が、打ち切りや支払可否を左右する理由を論理的に解説します。
※本記事は教育目的の一般解説です。実務運用は最新の通知・留意事項・各保険者の取り扱いを必ず確認してください。