令和8年度の柔道整復療養費改定(案)が公表され、業界内は混乱している様子です。
実際、前回の投稿以降、僕自身にも50件以上の問い合わせが来ています(^^;;
「2部位80%逓減て終わったね」
「もう保険経営は無理、今度こそオワコンでしょ?」
「接骨院経営自体が相当厳し苦なりますね…」
そんな声ばかり飛び交っています。
しかし今回の改定を、単なる“金額改定”として見てしまうと、本質を見失います。
本当に変わるのは、「何円上がった・下がった」ではありません。
今回の療養費改定で本当に変わるのは、「施術所の通院構造そのもの」です。
実際に現場・制度・経営レベルで見ていくと、本当に重要なポイントは、世間で最も騒がれている部分ではありません。
今回は、令和8年度柔道整復療養費改定について、現場視点・制度視点・経営視点から、独自ランキング形式で整理していきます。
第7位|2部位目後療料「80%逓減」
経営インパクト:★☆☆☆☆
今回、業界内で最も騒がれている中の1つが、2部位目後療料への80%逓減導入です。
SNS上では、
「接骨院終了」
「また保険が厳しくなった」
「保険で食えない」
といった極端な声も見られます。
しかし、実際の算定構造を冷静に分析すると、後療三法を含めた実質差額は、1回あたり10円で収まります。
もちろん、積み重なれば影響はあります。
ただし、本当に危険なのは、この“10円”ではありません。
今回の改定で本当に変わるのは、「通院管理の考え方」です。
2部位逓減だけに意識を奪われ、本質を見失うことこそ危険と言えるでしょう。
第6位|明細書発行加算(10円)の新設
経営インパクト:★☆☆☆☆
今回の改定では、明細書発行ごとに10円の算定が可能となりました。
一見すると、小幅なプラス改定に見えます。
しかし、本質はそこではありません。
今回の明細書では、
- 負傷名
- 施術部位
など、患者側への情報開示がさらに進みます。
つまり今後は、“患者にも知られる請求”へ変わっていくということです。
その結果、
- 不自然なセット算定請求
- 説明困難な負傷原因
- 一貫性のない通院理由
などは、今まで以上に違和感を持たれやすくなる可能性があります。
単なる「毎回10円算定」ではなく、「患者への説明責任」を強く求め始めているようにも見えます。
第5位|再検料「2回目算定」の新設(410円→420円)
経営インパクト:★★☆☆☆
今回の改定では、再検料の2回連続算定が可能となりました。
これは単なるプラスではありません。
制度構造として見ると、「初検料存型算定からの転換」改定とも読み取れます。
今後は、一度通院を終えた患者(治癒・中止)に対し、
- 1か月以内の新負傷 → 初検算定対象外
- 3か月以内の新負傷 → 再検料算定
という算定一択となります。
つまり従来型の、
治癒
↓
新負傷
↓
初検
↓
初検算定
という構造は、成立しなくなります。
その代わり、
- 経過観察
- 継続管理
- 状態説明
- 再評価
を伴う「再検」の重要性は、今後さらに高まっていくでしょう。
経営コンサル的に表現すると、2回目離反を強化する!とでも言いましょうかね笑
もちろん、「再検を行う → 記録する」の根拠は必須となります。
第4位|電療料46円・温罨法80円への引き上げ
経営インパクト:★★☆☆☆
後療時の電療料・温罨法が引き上げられました。
1回あたりで見れば微増です。
しかし、療養費算定の大部分を占める“後療”への加算である以上、現場への影響は決して小さくありません。
特に、
- 長期患者
- 継続患者
- 高頻度通院患者
を多く抱える施術所ほど、積み重ねによる影響は大きくなります。
ただし逆に言えば、「長期通院構造」そのものへの監視が、今後さらに強まります。(後述)
第3位|1部位目後療料「+45円」
経営インパクト:★★★☆☆
今回最大級のプラス改定とも言えるのが、1部位目後療料の引き上げです。
505円
↓
550円
へ増額されました。
一方で、2部位目には逓減が導入されます。
つまり今回の改定は、「2部位請求減額で療養費削減構造」とも読み取れます。
そしてこの流れは、後に解説する「8か月・9部位問題」とも強く関係してきます。
第2位|初検料算定ルール変更
今回最大のパラダイムシフトその2
インパクト:★★★★★
今回の改定で、本当にゲームチェンジになるのはここです。
初検料が1,560円へ引き上げられる一方、
一度通院を終えた患者(治癒・中止)に対し、
- 1か月以内の新負傷 → 初検算定対象外
- 3か月以内の新負傷 → 再検料算定
という算定一択となります。
つまり、「通院の入口」そのものが変わるということです。
これまでの柔整業界では、
治癒
↓
新負傷
↓
初検
という構造で、初検算定が成立していました。
しかし今回、その構造自体を見直しに来ています。
今後は、
- 患者の特性等を初めて見極めるという行為のみが評価され
- 施術終了後3か月以内に発生する新たな負傷する初検は再検という評価での対価
- 施術終了後1か月以内に発生する新たな負傷する初検は対価無し
という取り扱いになります。
第1位|年間8か月・9部位以上の「償還払い化」
今回最大のパラダイムシフトその1
重要度:★★★★★
今回、多くの受領委任施術所が最も警戒しているのが、この項目です。
直近1年間で、
- 通算8か月以上
- かつ通算9部位以上
の施術を受けている患者について、保険者判断で“償還払い”へ変更可能となります。
つまり場合によっては、「窓口10割負担通知」が患者へ届く可能性があるということです。
これは単なる事務手続きではありません。
場合によっては、
- 患者離脱
- 通院中断
- クレーム
- 信頼低下
に直結する可能性もあります。
その結果、今後の業界では、
- 年間8部位以内管理
- 長期分散型請求
- 安定2部位請求
など、新たな請求パターンが増えていく可能性があります。
さらに問題は、「審査会の重点審査」等により傾向がデータ化されるという点です。
業界全体が同じ方向へ動けば、その請求構造自体が、次の療養費改定の対象になる可能性があります。
つまり今後必要なのは、“逃げ方”ではありません。
必要なのは、「説明可能な通院構造」です。
まとめ|令和8年度療養費改定の本質とは?
今回の療養費改定は、単なる金額改定ではありません。
本当に変わるのは、
- 通院構造
- 請求構造
- 説明責任
です。
そして今後、現場では間違いなく、新たな請求パターンが生まれていくでしょう。
しかし、その請求構造自体が、新たな重点審査対象になる可能性も十分にあります。
これから必要なのは、“小手先の請求調整”ではありません。
必要なのは、「説明可能な通院設計」です。
次回予告
次回は、
「令和8年改定で生じる、新たな請求パターンとは?」
をテーマに、
- 今後増える可能性がある請求構造
- “新たな部位転がし”は発生するのか
- 審査会は何を見始めるのか
について、制度・現場・経営の視点から解説していきます。