※本記事は、令和8年4月30日に開催された委員会資料「柔道整復療養費の令和8年度料金改定(案)」を基に、現時点での制度動向を考察した内容です。
前回の記事では、令和8年度療養費改定の本質は、
- 単なる料金改定ではない
- 通院構造そのものが変わる
- 説明責任時代へ移行する
という点にあると解説しました。
特に今回、多くの柔整師が警戒しているのが、
- 直近1年で通算8か月以上の施術
- かつ9部位以上の施術
という患者の「償還払い化リスク」です。
すると当然、現場ではこう考え始めます。
「年間9部位超えないように調整すればいいんでしょ?」
「年間8月くらいで調整すればいいんでしょ?」
このような安易な発想から、業界全体で“新たな請求パターン”が生まれ始めます。
しかし、本当に危険なのは、
“請求を調整すること”ではなく、“業界全体が同じ動きを始めること”です。
今回は、今後増加する可能性がある「新たな請求パターン」を、制度・現場・経営視点から解説します。
パターン1|年間8部位以内へ調整する「長期化構造」

最も自然に発生しやすいのが、この構造かと思います。
従来は、
- 3か月前後で治癒
- 短期サイクル請求
という流れが比較的多いというデータがあります。

令和8年3月27日(金)柔道整復療養費の令和8年度改定の基本的な考え方(案)について(その3)資料より。
しかし今回、「年間9部位以上」がリスク化されたことで、
「3か月で治癒を付けると、早々に9部位以上になってしまう」
という考えが発生します。
すると、
- 治癒を遅らせる
- 長期理由を付けながらバランス調整する
- 長期逓減を避け、治癒まで4〜5か月へ長期化する
- 3か月以内の治癒率低下
という構造が増加する可能性があります。
改定から鑑みると、ルール遵守化っぽく見えます。
しかし問題は、
- 長期患者急増
- 長期理由急増
- 4〜5か月帯への偏り
- 3か月治癒率低下
という“統計異常”が発生することです。
審査会や保険者が見ているのは、1件の請求だけではありません。
縦覧点検等での全体傾向です。
つまり、
「最近この施術所、やたら長期患者増えてない?」
となった瞬間、重点審査院の対象になる可能性があります。
パターン2|「平均部位請求」型の変化


これも今後、かなり増える可能性があります。
従来は、
3か月目前後治癒
↓
翌月新負傷(同月内新負傷)
↓
この繰り返し
このサイクルが「3か月前後」となっています。
しかし改定後は、
- 3か月前後で治癒と新負傷を繰り返すと年間9部位を超える
という構造へ変化します。
すると現場では、
従来同様の「治癒と新負傷タイミングの調整」
が始まります。
つまり、
「長期過ぎてから◯部位治癒、翌月(翌々月)◯部位算定しよう」
等という調整です。
しかしここで問題になるのが、
- 長期理由
- 新負傷理由
- 通院頻度
- 治癒タイミング
これらの整合性です。
例えば、
- 長期理由が必要なほど症状継続しているのに新負傷?
- 4~5か月間隔で治癒と新負傷?
- 月末治癒直後の翌月頭に別部位負傷?
という、“説明のズレ”が蓄積し始めます。
ここが極めて危険です。
1件1件だけ見れば説明できる。
しかし、統計で見ると異常になる。
これが、審査会・保険者視点です。
柔整療養費の審査要領では、
「個別月」より「傾向」
で審査することとなっています。
「柔道整復療養費審査委員会の審査要領」より
11.同一結術所における同一息者の負傷と治療等を繰り返す施術、いわゆる「部位転がし」に関すること。
なお、審査は、以下の審査を組み合わせて行うこととする。
(3)傾向審査・縦覧点検:同一施術所における施術傾向(多部位・長期・頻回施術の傾向、いわゆる「部位転がし」の傾向、同一施術所における同一患者の通算受療期間の傾向等)
本当に危険なのは、「請求」ではなく“傾向”で疑義を招くことです。
今回の令和8年度改定で、
「どう年間8部位へ収めるか」
を考え始めている柔整師は少なくないはずです。
これは、
過去の柔整療養費改定でも繰り返されてきた流れです。
今回の記事では、
- 長期化構造
- 平均部位請求
について解説しました。
次回予告|残りの“新請求パターン”を徹底解説
制度・現場・経営視点からさらに深掘りしていきます。
※本記事は、令和8年度柔道整復療養費改定について、令和8年4月30日に開催された関係委員会における「柔道整復療養費の令和8年度料金改定(案)」を基に考察・分析した内容です。
現時点(令和8年5月22日午前9時時点)において、厚生労働省から正式な通知・通達等は発出されておらず、今後の通知内容や運用解釈等により、実際の取扱いが変更となる可能性があります。
そのため、本記事内の内容には、現時点における制度案および現場運用上の考察・見解が含まれます。