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腰部捻挫か椎間板ヘルニアか?という議論がそもそも間違いなんやけどなあ

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こんなブログ記事を見つけた。

書いているのはかつて厚生労働省の役人で、現在は療養費請求団体の幹部をしている柔道整復師。

自分の団体会員の療養費支給申請書が理不尽な理由で返戻されたので、再審査を請求しているもののようである。

とりあえず引用するね。

関西テレビ放送健保組合が柔整師の頸椎(原文ママ)捻挫の治療を認めず、医師診断の腰椎椎間板ヘルニアの施術は柔整師の対応外で医師が診察を行うものであることを理由に一部不支給決定されたことに審査請求を行う

上田たかゆき活動報告 2019年6月21日
「K健康保険組合は柔道整復施術療養費について初検時での腰部の負傷名は腰椎捻挫ではなく腰椎椎間板ヘルニアであって、施術者の認識誤り、判断誤りを主張したうえで、「腰椎椎間板ヘルニアは捻挫ではないので療養費の支給対象外である」との結論のもと、一部不支給処分とされました。
しかしながら、外出時に歩行中バランスを崩し、踏ん張った際に請求人が腰椎を捻って負傷したことが、腰椎椎間板ヘルニアであったとの論理構成は、すなわち施術者が初検時において判断を誤って施術を行ったと主張しているのと同じことなので、施術者である柔道整復師に対して甚だ失礼な話であります。
負傷原因を明快に特定したうえで施術を受け、施術者の行う治療行為としての施術により疼痛や機能障害、圧痛等の症状の緩解が十分に認められ、最終的には症状の消失により治癒に導く施術にあたって、これだけの施術実績と患者への治療としての効能効果を齎して(もたらして)もなお、何の説明もなく詳細な理由もないままK健保組合が原処分としての不支給決定をされたことはまことにもって遺憾であることから審査請求の代理人となりました。」

上田たかゆき活動報告(6/21)

整骨院で療養費の支給対象になるのは「急性・外傷性の脱臼、骨折、打撲、捻挫、(とあと挫傷)、つまり受傷機転が明確なケガということになっている。

「外出時に歩行中バランスを崩し、踏ん張った際に(略)腰椎をひねって負傷した。」のであればこのケースでは療養費の支給要件を完全に満たす。

引用部で言うと「負傷原因を明快に特定し」のところね。

ただ、多分「施術により疼痛や機能障害、圧痛等の症状の緩解が十分に認められ、」ているにもかかわらず「腰椎椎間板ヘルニア」という診断名がついているということは、この患者さんにはもともと腰の痛みがあって、医療機関で「腰椎椎間板ヘルニア」の診断名がついていたんじゃないかな。

それで、過去のレセプトと突き合せた結果として「腰椎捻挫ではなく椎間板ヘルニア」であるとして返戻の対象になったものと推察する。

これは確かに無茶な理屈である。

負傷のベースにある基礎疾患やら既往症を持ち出すのが「あり」ならば、コーレス骨折の患部への施術だって「骨粗鬆症は療養費の支給対象外である」といって返戻できることになってしまう。

ただね、それなら柔道整復師が「腰椎捻挫」の傷病名をつけて療養費を申請したのに対して保険者が「それは椎間板ヘルニアでしょう」と言って申請書を返戻したことに対し、「施術者が初検時において判断を誤って施術を行ったと主張しているのと同じことなので、施術者である柔道整復師に対して甚だ失礼な話であります。」という理屈が成り立つかどうか。

何度も書いたことの復習になるのだけれど、診断権を持たない柔道整復師には、本来患者さんの症状に対して傷病名をつけることができない。

医師の同意(=診断)が必要な骨折、脱臼は別にして打撲や捻挫(や挫傷)はあくまでも療養費の支給申請を行うための便宜的なもの、言ってみれば符牒にすぎない。

そうして打撲や捻挫であるかどうかを判断するための材料こそ「急性、外傷性であるかないか」なのである。

つまり患者さんから「急性かつ外傷性」であると申告を受けた症状に対して柔道整復師は「打撲」「捻挫」として療養費の支給を申請できる。

そうでないものに対しては、「それは捻挫ではない」と言ってしまうと陰性診断と言って診断行為になるので、「その症状は療養費の支給対象ではありません」と説明することになる。

いずれにせよ椎間板ヘルニアという傷病名を柔道整復師が公式の場で使うことはできない。

腰椎椎間板ヘルニアの既往症がある患者が「外出時に歩行中バランスを崩し、踏ん張った際に腰椎を捻って負傷した」今回のケースで、腰椎捻挫か椎間板ヘルニアかを診断権のない柔道整復師と保険者とで議論しても全く意味をなさないのである。

柔道整復師側が主張するべきは急性・外傷性という療養費の支給基準を満たしているのだから返戻は不当ですよ、ということだと思うのだがどうだろうか。


関係法規Masters担当 金谷康弘


柔道整復師、かなや整骨院院長

専科教員として専門学校で関係法規、柔道整復理論を担当。

柔道整復師とはどんな職業なのかをあれこれ考えていたら、業界に馴染めないまま28年経ってしまう。

医師の代替ではなく現代医療を補完する柔道整復術を目指し、「外傷を診ない」「療養費を取り扱わない」整骨院を開設。

柔道整復師が自分の職業を自分の子供に説明できるように願いつつ、柔道整復師法についてのあれこれを発信中。
クラニオセイクラルな日々-あたまをさわれば幸せになる

現在、一般社団法人日本頭蓋仙骨療法協会代表理事。


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